伝統を守り革新を続ける「HOSOO」のクリエイティブから学ぶこと

京都西陣織のテキスタイルブランド「HOSOO TOKYO」を訪れ、伝統芸能の伝統と革新を目の当たりにしました

日付:2023.8.22

今回のFFiの舞台は、東京ミッドタウン八重洲内にこの春オープンしたHOSOO TOKYO。京都からお越し頂いた「細尾」の12代目当主の細尾真考さん直々にレクチャーした頂いたのちに店舗を訪れ、伝統工芸の伝統と革新を圧倒的なリアリティと共に体感した。

レクチャーは「西陣織って聞いたことありますか?」という問いかけからスタート。西陣織の特徴は「オーダーメイド」と「分業」が体現する「経済合理性を度外視した美の追求」だと細尾さんは語る。1200年もの歴史を遡ると、そのバックグラウンドはお金と時間に糸目をつけない皇族や神社の人々からのオーダーメイドに遡り、日本のみならずタイの国王からも注文があったとか。「分業は効率化のイメージを持たれますがそうではありません」と細尾さん。西陣織が必要とする20工程は20人のスペシャリストによって担われ、その目的はあくまで美の追求だという。

そうはいっても、このご時世。西陣織産業も苦境に立たされていることは予想するに易いが、世界を代表するラグジュアリーブランドに西陣織が注目され、伝統をも守るための革新の道を確実に切り拓いていることはご存知だろうか。ディオールの世界100都市の店舗で、細尾の西陣織が椅子やソファーの張り地、壁紙に使用されている。

きっかけは、ルーブルの装飾芸術美術館に展示した細尾の西陣織の帯を見た建築家のピーター・マリノ氏からの一通のメールだった。Diorの店舗リニューアルに西陣織を使いたいとの依頼だったが、ここで大きな壁が立ちはだかった。生地幅の問題である。西陣織の伝統的な生地幅は32センチだが、これでは壁紙やソファに使用すると継ぎ目ができてしまうのだ。32センチ以上の布を織ることが難しい理由の一つが、西陣織の「箔を糸を織り込む」特性だった。和紙に金や銀を貼り細くカットしたものを糸のように手作業で折り込むことで生まれる輝きが西陣織の特筆すべき点であり、西洋との差別化できるポイントでもあると細尾さんは話す。「箔が付く」という慣用表現は西陣織に由来するそうだ。

「大きな布を織れる織機がないなら、自分達で作るしかないと思った」細尾さんは淡々とした口調ながらメンバーの目を真っ直ぐ見ながらそう話した。開発に1年かけ、西陣織の1200年の歴史で初めて150センチ幅の西陣織が織れる織機が誕生した。現在はディオールのみならず、シャネル、ブルガリホテルなど、ラグジュアリーブランドから次々とオファーが舞い込み、ブランドに合わせたテキスタイルを提供している。王室であれラグジュアリーブランドであれ、お客様からの「経済合理性を度外視した美の追求」に「オーダーメイド」で応えるという本質は、1200年の時を隔てても変わっていないという言葉が印象に残った。

内装に留まらず、スーツに仕立てたり、レクサスの扉に施されたり。レストランの個室の仕切りとしてマジックミラーのように一方からは外が透けて見えるが一方からは見えない美しい衝立など、活躍の場を広げている。テクノロジーとの融合も模索しており、青い光を緑に変えるクラゲのDNAを蚕に組み込んだ糸による西陣織の写真を見たメンバーからはどよめきがもれた。

また、世界初の150センチ幅の織機を開発に踏み切った細尾12代目細尾さんは「家業なんてさらさら継ぐ気がなかった元ミュージシャン」だったというのも欠かせない話である。西陣織の話に留まらず、細尾さんのキャリアに関するお話も随所で光っていた。メンバーは異色の経歴に興味を持ったようで、自由質問の時間では「なんで家業に戻ったんですか?」という質問も。細尾さんは「伝統産業は決められたことを繰り返すものであるコンサバティブなイメージがあったが、先代が和柄を海外へ売り込む姿を見て、挑戦が許されると分かった。」「見方を変えれば、伝統産業はクリエイティブ産業だと気づいた」「業界の流れを変えられるのではと妄想しているうちにやりたくなった」とはにかみながら話してくれた。最近は「最小のものを最大化させる」という妄想を膨らませており、モンゴル民族の家のような織物の家を10年以内に作りたいそう。単なる妄想に留まっておらず、モンゴルには2週間もの間視察済み、紫外線が当たると3秒で固まる織物は開発済みで「でもまだ固まったまま解けなくて…開発段階なんです」と茶目っ気たっぷりに話す姿に、メンバーも笑顔になっていた。
音楽でも西陣織でも「人を感動させたい」という想いは自分の中で一貫していると気づいたことで、他ジャンルの専門家とコラボレーションする時にも分野は違えど想いは同じであるという「共通言語」があるような感覚を抱けるようになり、協働しやすくなったそうだ。

「やりたいことを一生懸命やっていれば、やりたいことが変わったとしても後から繋がる瞬間があって。そういう意味で失敗というものはないんじゃないかな、やりたいことを信じてやってみてもいいんじゃなかなと思います」と細尾さん。ミュージンシャンから西陣織に飛び込んだ上に、数多の壁を乗り越えて海外進出を成功させ、現在もトライアンドエラーを繰り返しながら挑戦し続ける細尾さんにも関わらず、持論を強く押し付けることなく控えめにエールを送る柔らかさが印象に残った。

レクチャーの後は、東京ミッドタウン八重洲内の店舗に細尾さん自らが案内してくれた。レクチャーで西陣織の構造を聞いている時のメンバーはイメージがつかずややきょとんとした顔だったが、実物のテキスタイルやプロダクトを見ると大興奮。特に「和紙の上に金箔を貼って糸のように裁断し織り込むのが西陣織の特徴である」という説明はイメージがついていなかったが、実物の繊細かつ華やかに光る様を見たら目が離せなかった。特にメンバーが夢中になっていたのが、50種類はあったであろうテキスタイルのサンプルコーナーだった。自由に触らせていただき、自然とお気に入りの一枚をそれぞれ選ぶ流れに。布の見え方を大きく左右する照明にもこだわっており、リモコンで照明モードを変えられるのだと教えてくれた細尾さんがメンバーにリモコンを渡すと、メンバーは大喜びで布に合う照明に逐一切り替えていた。

今回のプレインターンシップでは、参加前後でメンバーにある変化があった。それは、ミッドタウン内に散りばめられている西陣織に気づけるようになったことだ。行きに集合場所だったベンチに座ったときはメンバーにとってただのベンチに過ぎなかったが、帰りはベンチに組み込まれた模様に気付き「これも西陣織だ!」と得意気だった。

「1200年前に遡れる西陣織を扱うということは、1200年後のことも考えられるということ。そういう仕事は最高だと思った。」私自身就活で様々な大人の言葉を聞いたが、1200年もの時間軸でモノを語れる大人との出会いは初めてで、貴重さが身に沁みた。(FFi大学生メンター/慶應義塾大学4年内藤里沙)

メンバーの感想

帯を作るにあたり各工程20名の職人がいる。というのが職人の多さにも驚きました。実際にサンプルを間近に見られたのが楽しい体験でした。今回お話を聞く前までは西陣織についてほぼ全く何も知らない状態でしたが、ゆっくり丁寧に教えて下さり、西陣織に対する関心や興味を持つようになれました。そして、もっと日本の文化を知り、もっと多くの日本の文化が世界的に広まれば良いなと思いました。また今回ffiで教えて下さった事を海外に住む友達に共有し、より多くの人に日本の文化を知って貰いたいと思いました。(新関桜子/高校3年) 

私は高級ブランドに興味があり、毎度お店にはいる度ワクワクする気分を味わっていました。今回の西陣織に関するお話の中で高級ブランドとのコラボで壁画に使われていたことを知り、あのワクワク気分は商品そのものの力だけでなく、その周りを取り囲む手間隙かかった西陣織で造られている壁などで更に商品と気分を引き立たせているのだなと思い、お店にはいる度商品を見る前に周りを見渡すようになりました。今回は、織物をお店で見て、触って、感じることができたことが貴重な体験でした。(坂井菜奈美/高校3年) 

たくさんの西陣織の中から、みんなで一番気に入ったものを探して発表したり、細尾さんがドラゴンボールの話をされながら、今開発している織物のお話をされたりしたことが、印象に残りました。普段自分から発言をすることが苦手ですが、細尾さんに質問をしたのもよい機会となりました。(植松麗子/高校1年) 

織物が元の織物の形から離れて、建物の柱などにも使われていたことにおどろいた。織物に対するイメージが変わった。(hana/高校1年) 

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