異彩×アート×ビジネスで世界が注目! 「ヘラルボニー」を知る

グローバルに支持を広げる「HERALBONY」に伺い、アートとビジネスを通じてその目指す世界を教えていただきました。

日付:2025.4.25

近年、グローバルな賞を次々と受賞しそのフィロソフィとビジネスモデルが支持を集めている「HERALBONY」。アートを通じ社会の境界をなくす実験場として名付けられた「HERALBONY LABORATORY GINZA」を訪れました。FFi大学生メンターがレポートします。

今回のプレインターンシップでは、「異彩を、放て。」をミッションに掲げるヘラルボニーについて学ぶべく、銀座レンガ通り沿いの常設店舗、へラルボニー ラボラトリー ギンザ(HERALBONY LABORATORY GINZA)を訪れた。本店舗1階には、アートプロダクトを販売するストアと、定期的に作家やテーマごとの展示を行うギャラリーを併設。単なるプロダクトの販売にとどまらず、ヘラルボニー契約作家の生の創作活動に触れる機会を提供している。 

まずメンバーは店舗1階のギャラリーを訪れ、今年5月に始まったばかりの企画展「HERALBONY ISAI」シリーズを見学した。ビーズや織物など、アーティストの手仕事に焦点を当てた本シリーズは、「『鑑賞する者』と『鑑賞される物』という枠組みを超えて、人とアートが一体となる」という斬新なコンセプトを掲げている。「人とアートが一体になる」とはどういうことか。それは、シャツやバッグ、Tシャツを「額縁」に見立て、そこにアートピースを自由に組み込むことによって、衣服を着る人そのものが美術館のキュレーター、つまり「アートを運ぶ装置」となるというユニークな発想である。ギャラリー内の黒を基調とした空間からは凛とした雰囲気が感じられ、作家の筆使い、絵の具の飛沫、混ざり合う色彩をより一層際立たせていた。見学中、メンバーの多くがテキスタイル作品の美しさと繊細さに息を飲んでいた。その上、これらすべての作品は障害のある作家が手を施しているという事実にも驚きを隠せない様子だった。インターン生として店舗に立たれている飯島さんのお話の中で、今回の「ISAIシャツ」は20万円を超える価格で販売されていることを知り、中高生のメンバーたちは衝撃を受ける。飯島さんが敢えて価格に言及したのは、「障害は福祉の文脈で語られ、作品や作家そのものの価値が過小評価されていること」「へラルボニーはそんな不条理な現状を変えようと、これらのアート作品を通して社会の常識に対するカウンターカルチャー精神を体現していること」をメンバーに伝えるためだった。へラルボニーがどのような企業なのかを学ぶ前に、まっさらな状態でアート作品に触れ、障害に対して抱いていた固定観念に気づかせる。このスタートからは、「異彩を放つ作家の作品を世に広め、障害の概念を変える」というへラルボニーの企業理念を強く反映していると感じた。 

その後は、ギャラリーに隣接するストアに移動し、ヘラルボニー契約作家の作品がさまざまな形でプロダクトデザインとして落とし込まれていることを学んだ。ストアには、バッグ・ボトル・革小物などをはじめ、スカーフやシャツといった衣類も販売されている。シックな空間に囲まれたギャラリーでは真剣な眼差しで作品を鑑賞していたメンバーたちも、「スカーフの柄が素敵!」「これおばあちゃんにプレゼントしたい!」と目を輝かせながら楽しんでいる様子が印象的だった。ストアで販売されている商品のほとんどは自社製品であったが、中には他企業とのコラボレーション商品も多数陳列されていた。創業当初から、「ブランドの傘に入れることで障害の概念を変えること」を目指し、さまざまなプロダクトをデザインしてきたへラルボニー。現在ではその母体を超え、さまざまなパートナー企業とのコラボレーションを通じてその精神を体現しているのだと感じた。 
 
数々の魅力的なプロダクトに後ろ髪をひかれる思いでメンバーは1階の店舗を後にし、上階のオフィスを訪れた。扉を開けると、1階のストア・ギャラリーと同様、多くの国内外のアーティスト作品が飾られていた。個性豊かなアートに見守られながら、創業ストーリー・企業理念・これまでの取り組み・事業など、へラルボニーの軌跡について、アカウント部門リードアカウントの伊藤琢真さんからお話を伺った。 

「異彩を、放て。」この言葉をミッションに掲げた「へラルボニー」は、その誕生において、両代表の兄・翔太さんの存在なしでは語れない。翔太さんは自閉症という先天性の障害がある。周囲の人々からその言動をからかわれ、「可哀想」という言葉をかけられることも少なくなかったという。両代表にとって翔太さんは唯一無二の「兄」であるにもかかわらず、社会からは「障害者」というフィルターを通して捉えられることに幼い頃から疑問を抱き続けていた。「兄は社会から指を差される存在ではない」その強い想いは、障害に対するネガティブな固定観念を変革させるためにへラルボニーを創業する原動力となったという。驚かされたのは、「へラルボニー」という言葉は、文字を書くことが好きだった翔太さんが7歳の頃に自由帳に記していた言葉であること。実際に翔太さんの自由帳を拝見すると、たくさんの文字が並ぶページの一角に、「へラルボニー」と大きく記されているのがわかる。聞き覚えのないこの単語はネットで調べてもヒットせず、翔太さん自身も「わからない」の一点張り。しかし、両代表は「自分たちにとっては無意味のように思えるこの言葉は、翔太さんの心に残るだけの価値があるのかもしれない。」と解釈したという。この翔太さんの自由帳にあった言葉から着想を得て、「一見意味がないと思われるものに価値を創出し、世の中に発信していきたい」という思いを込め、「へラルボニー」という会社名を付けたという。この心温まるビハインドストーリーを知ったメンバーの表情から、思わず笑みが溢れる。へラルボニーの商品を「知っている」だけでなく、ブランドが誕生したバックグラウンドを「学ぶ」ことで、ブランドそのものや商品に対する愛着がより一層強まることを実感した。 
伊藤さん自身も、知的障害のある従兄弟がいるという。その従兄弟が生み出したアート作品の独自性あふれる世界観に深い感銘を受けたことが、「障害」というテーマに真摯に向き合うきっかけとなった。障害を敢えて普通ではないと言い切り、その特性が秘める無限の可能性を社会に広めていきたい。このブランドの理念がただの理想で終わらず、体現され続けているのは、へラルボニーで働く一人ひとりが持つ強い想いがあるからこそだと感じた。 

「異彩を放つ作家とともに新しい文化を生み出すクリエイティブカンパニー」として、へラルボニーは自社でプロダクトを製造するだけでなく、国内外の主に知的障害をもつ作家とライセンス契約を結び、そのアートデータを用いてパートナー企業の取り組みをプロデュースする事業を展開している。このビジネスモデルにおいて、へラルボニーが最も重点をおくのは、作家に対して正当な対価を支払う循環だ。つまり、へラルボニーがパートナー企業から報酬を受け取り、その収益の一部を作品使用料として作家に還元する。作家に対して正当な対価を支払うプロセスは一見当たり前のように思えるかもしれない。しかし、社会から「障害者」というレッテルを貼られ、その枠の中で埋もれていたアーティストやその家族にとって、へラルボニーから受け取る対価は「社会からの正当な評価」として大きな意味を持つ。その証として、ライセンス契約作家の親御さんから「へラルボニーのおかげで息子が数百万円を稼ぎ、扶養の基準を超えて確定申告をする日が来ました」と感謝のメッセージが届いたことがあるという。このテキストメッセージに端を発し、「鳥肌が立つ、確定申告がある。」という意見広告が作成されたという。

へラルボニーが障害のある人たちやその家族の選択肢の幅を広げた例はこれだけではない。彼らにとって、百貨店や高級レストランに足を運ぶことは決して容易なことではなく、心理的ハードルが高い。しかし、2024年に大阪・阪急うめだ本店で開催されたポップアップには、「へラルボニーのポップアップなら行けるかも」と障害のある人やその家族が多く訪れたという。

これらのエピソードから、へラルボニーは障害に対する社会の概念を変えているだけでなく、当事者と家族の人生に大きな希望と可能性をもたらしていることを強く痛感した。現在へラルボニーは、国際アートプライズの創設、フランスでの事業展開、多方面にわたるパートナー企業とのコラボレーションを実現している。勢いを増して躍進を続ける中、「世界の人権感覚を一歩前に進めるブランドIPになる」という将来の展望を掲げ、さらなる高みを目指しているという。

へラルボニーについて学びを深めた後、メンバーたちはオフィスに飾られたアート作品を用いて、とあるワークに取り組んだ。それは、「この部屋に飾られたアート作品の中から自分のお気に入りを一つ選び、その作品にタイトルをつける」という内容だ。1つだけお気に入りの作品を選び取る上に、それにタイトルをつけるという難題に苦戦するメンバー。作品を遠くから眺めたり、首を傾げて見る視点を変えてみたり。それぞれの方法でアートを感じ取ろうとする様子が印象的だった。いざ、全員の前で自分の考えたタイトルを発表するとなると、恥ずかしくてなかなか手があがらない。「じゃあ目が合った君から!」と伊藤さんからの指名を受け、メンバーたちは順番に披露していく。メンバーそれぞれの選ぶ作品は異なり、同じ作品を選んだメンバーの間でも、その着眼点やアートから受け取るメッセージは一様ではなかった。「自分と他者が違うことを自覚し、その違いを恥じるのではなく、むしろ社会に彩りを与える多様性として価値を見出す」これこそ、伊藤さんがワークを通して中高生に伝えたかったメッセージだった。全員の前で発表することを躊躇ったのも、他人と違う意見を言うことを恥じていたのだと気付かされた。伊藤さんは、「かつては、自分自身も人と違うことは恥だと感じ、隠してしまいがちでした。でも、自分の『特性』にフォーカスすることできっと新しい価値が発見できると信じています。」とエールを送り、ワークを締め括った。 

へラルボニーは、障害のある人を敢えて「普通ではない」と断言した上で、個人の特性に価値を見出す。今回の活動全体を通じて、非言語的な表現方法としてのアートが秘めるインパクトに衝撃を受けるとともに、アートを共通言語に異彩の可能性を世に打ち出していくへラルボニーの強い意志を感じることができた。(FFi大学生メンター/上智大学3年 岸 珠希) 

メンバー・メンターの感想

ヘラルボニーでは、社会からの障害者への可哀想とか支援対象という偏見をなくしていこうとしていた。実際に、彼らが作った作品をバッグやファッションアイテムとして展開し、障害者を「表現者」として社会に新しい形で紹介していたのが印象的だった。これまで僕は、自分の中でも「守られるべき存在」というイメージがあったが、ヘラルボニーの活動を知って、個性の魅力や表現力に感動した。彼らの作品は、障害のある・ないの枠を超えて世界に発信で来ていると思う。また、ヘラルボニーは、障害者を1人のアーティストとしてリスペクトしていているのが伝わってきて、とてもかっこよかった。(エイスケ/高校2年)

お話を聞くまでヘラルボニーの意味をしりませんでした。ですが、お話を聞いた後もヘラルボニーの意味は知ることが出来ませんでした。ヘラルボニーとは会社の創設者のお二人のお兄さんがノートに書いていた言葉です。いくら調べても意味は出てこず、お二人も何かわからなかったとおっしゃっていました。お兄さんには僕らにはわからない価値をこの言葉に見出していたのだと思います。人それぞれが同じ価値観を持っているわけではないので、自分ひとりひとりの価値観を大切にしたいと思いました。(アオ/中学3年)

今回のプログラムを通し、アートという非言語的なアプローチから知的障害に対する社会のスティグマを排除しようとするヘラルボニーさんの企業精神や、それを体現する数々の素晴らしい取り組みに強く感銘を受けました。本プログラムでは、序盤にヘラルボニーさんのギャラリーや店舗を見学させていただき、実際の展示作品や商品の良さを体感した上で、伊藤さんから企業についてお話を伺いました。これにより、「障害」というフィルターを通してではなく、それぞれのアーティストさんが持つ異彩をありのまま感じ取ることができました。  また、伊藤さんの「他者との違いは社会の彩りであり、それ自体で価値がある」という言葉が印象に残っています。集団の和を重んじる日本では、人と違う考えや行動を恥じる傾向がありますが、自分独自の視点によりフォーカスし、特性を見出すことによって確固たる「自分らしさ」の発見につながるのではないかと考えました。(FFi大学生メンター/上智大学3年 岸 珠希)

障害を持つ彼らにとっての日常的なこと、当たり前なこと、「好き」や「得意」に秘めている無限大の才能に心を奪われた。 私にできることは、障害も持つ方々が輝ける場所があるということをを広めることだと思った。だから、夏にボランティアで一緒に活動している施設に連絡し、「ヘラルボニー」にぜひ挑戦してほしいと、伝えた。「ヘラルボニー」は作品に対して価値をつけるからこそ、目標ができるかもしれないと考えた。(FFi大学生メンター/成城大学3年 大野和可)

ヘラルボニーについてもっと知りたい!と思うような1時間半でした。最初のアトリエではisaiをテーマにした空間で、作者のアート空間をのぞいている感じがして、とてもワクワクしました。実際にジャケットも羽織らせていただいて、デザインが可愛いだけでなく、軽くて通気性が良かったりと機能性もよくて感動しました。パッチワークを自分の好きなところに付け替えれるというのも面白かったです。2階でのワークショップはヘラルボニーのいろいろな作品を見させていただいて大変貴重な時間だったと思います。作品にタイトルをつける時間では、その作品の奥の奥まで見よう!と思って見ていました。アートに触れるのが好きだったので、様々な作品をじっくり見れて嬉しかったです。フランスにもヘラルボニーの商品や本部の方がいらっしゃるということなので、留学に行った時にぜひお会いしたいなと思いました!(FFi大学生メンター/明治学院大学2年 松浦ゆら)

「普通じゃないことが可能性である」という言葉が特に印象的でした。障害のある方々の多様な視点がアートとして世界で評価され、愛されていることを知り、大きな気づきがありました。 ベラルボニーさんの、障害のある方への向き合い方や、チャンスを生み出す取り組みにとても感銘を受けました。障害の有無に関わらず、自立した一人の人として生きていける社会について考える、とても濃い時間でした。一社会人として、自分が体験した学びや感動を発信し、周囲の人にも「こんな世界がある」と知ってもらうことも、小さくても大事な貢献だと感じました。 本当にありがとうございました。(FFiシニアメンター/入江操)

動画撮影・編集:FFi大学生メンター/成城大学2年新関桜子

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